『増々難しくなる、老朽化したインフラ整備対策』 !! (・_・;)
今年の年始め、埼玉県八潮市で起こった道路陥没事故、読者の皆様もご存知の事だろう。道路が陥没し、そこにトラックが運転席から飛び込む様な形で陥没箇所に吸い込まれるかの様に転落した痛ましい事故である。後日難航の末、運転手が帰らぬ人と成って発見されてしまった事は何とも断腸の想いを言わざる得ない心境である。しかし年明け早々に発生した八潮市に於ける道路陥没事故。これが悪魔の呼び水と言っては失礼な表現に成るかも知れないが、堰を切ったかの様に、国内各地で次々と同じ様な道路陥没事故が次々と後を絶たずに起こり始めている。戦後昭和の半ば、つまり高度経済成長期に進められた上下水道関連のインフラ設備から半世紀の年月が経過し、ここに来て設備の経年劣化=老朽化が次々と全国規模で起こり始めているからだ。01月に発生した八潮市の道路陥没事故を皮切りに、02月には大阪府堺市、04月には京都市中心部、05月には大阪府城東区での水道管破裂と道路冠水等と連日の様に様に事故が相次いだ。今回、この事故が大きくあからさまに報道される以前から、時折、道路陥没関連の事故は少なからず地域限定の範囲で起こっていた事は事実だ。只、今年年明け早々に起こった八潮市に於ける道路陥没事故は衝撃の度合いを超越した想定外の大事故と言わざるを得ない。これがキッカケで次々と国内各地に於いては道路の陥没事故が相次いで箍(たが)が外れたかの様に起こり始めて仕舞っている。何で今年に入って一気にこの事態が表面化したのか?背景にひとつあるのは、上下水道の老朽化という深刻な問題である事がひとつ言える。水は、水道管を移動して各所に運ばれて行くが、この水道管は総延長74万km、地球18周分の長さに到達する。途方もない距離の水道管を設置し、これまで維持し続けて来た事自体が驚きであり、管理にあたってきた方々には本当に感謝しかない。しかし今現在、人口減少や少子高齢化による人手不足、地方自治体で厳しさを増す財政状況を背景に、維持管理のリスクが次第に高まっていると言うのがその理由である。付け加えて言うと、水道事業は、基本的に各市町村の独立採算制のため、地域間の格差が大きい。つまり、「水の移動」を巡っては、私達は住む場所に因って格差が生じていると言う事である。こうした問題は何も水道だけには留まらない。車や電車の移動を支える橋やトンネルを始め、戦後昭和の高度経済成長期以降に整備されたさまざまなインフラが、様々な面で老朽化に伴う危機に直面している。私達の暮らしを成立させる様々な「移動」を支える社会システムが、今危機に瀕していると言うのだ。人やモノ、情報、水、電気等のモビリティを支えるインフラを巡るリスクが高まる中で、求められるのは「危機と向き合い、民主的に移動の在り方を決定して行く」事だろう。インフラの維持管理は、どうしても多額の費用が掛かる上に、そうした費用の多くは税金に因って賄われているが、市民の理解が無い状態で費用を上げる事は難しい。無理やりあげた場合には、インフラは維持出来るかもしれないが、市民との信頼関係は壊れて仕舞うだろう。インフラを維持出来ても、移動を巡るめぐ公正さ(モビリティ・ジャスティス)という観点で問題がある場合、中長期的には持続可能とは言えないのである。特筆すべき事例としては、岩手県紫波(しわ)郡矢巾(やはば)町の事例だ。同町では、平成20(2008)年から現在まで「矢巾町水道サポーター」と言う全住民参加型に因る取り組みを行なっていると言う。公共の財産である水道を守るために、住民と事業者、行政が連携して一緒に学び、考え、水道の在り方を如何にしてあるべきかを決定して行く事が目的だ。定期的に開催されるワークショップでは、水道水について学んだり、実際に浄水場を見学したりといった取り組みを行なっている。この様に、日々の「水の移動」を支える社会システムと制度を自分の目で見て、危機の構造を知る事で、当事者意識を高めて貰っている。更に、同28(2016)年には「将来世代」の視点を取り入れたワークショップを行なった。今後、水道が老朽化して行くと、将来如何言った問題が起こるのか、更新サイクルはどの程度が適切なのか、費用はどのぐらい掛かるのか。水道施設で行われている現場実態について正しく知った上での議論を行なった結果、町は専門家の意見も踏まえ、ワークショップで一つの班が提案した「70年サイクルで水道管を更新するために、料金を6%引き上げる」という案に沿った計画を決定、計画通り値上げに踏み切ったのである。つまり、町民が自ら水道料金の値上げを選択しているひとつの例の方式である。移動とインフラを巡る諸課題は、往々にして「目の前の課題を如何するか?」に関心が集まりやすい。しかし、人口が減少し少子高齢化が深刻化する中では、今以上にインフラを維持管理する人手は少なくなる。デジタル・テクノロジーやAIなどの新技術の活用と発展にも期待したい処だが、それだけで全てが解決する事はない。新たなテクノロジーや技術を導入するためにも、結局はお金が掛かり、それ相応の税金が充てられる事に変わりはない。こうした中でモビリティ・ジャスティスなインフラを実現して行くために求められるのが「将来世代」、つまりは未来人の視点である。現在の民主主義システムでは、「私達が我慢すれば、将来を生きる子供世代や孫世代、これから生まれてくる世代も豊かに暮らせる」という発想の政策は好まれず、「すぐに自分の利益になる」政策が推し進められやすい。しかし、今を生きる自分達さえ良ければそれで良いのでは、所謂世代間の分断が増々深まり、将来に負担を先送りするだけで、根本的な解決には至らない。「未来人の視点を取り入れて考える事なんて本当に出来るの?本末顚倒も甚だしい」と、思うかも知れない。しかし近年に於いては、フューチャー・デザインと呼ばれる研究領域の成果や矢巾町の実践から、丁寧に趣旨を説明し、正しい情報を共有し、話しやすい議論の環境を設ける等すれば、多くの人が未来人の視点を取り入れて考えられる事が明らかになっている。とかく今年年明け早々に起こった道路の陥没事故、ライフラインの老朽化が挙げられる中、この分野に詳しい専門家はこの様に警笛を鳴らしている「新しく何かを作る事に比べると、維持管理の予算は、どうしても優先順位が低くなる。只、今回の様な事態があった事で、維持管理を怠ると非常に大変恐ろしい事に成ると言うのは、管理者にも市民の皆様にも認識して頂いたのではないでしょうか。必要な予算はきちんと掛けて維持管理をして行かないと老朽化は刻一刻と進み、それこそ過去に作ったインフラが何時何処で突然に牙を剥くと言うか、“負の遺産”に成って仕舞う予兆の現れだと思います。」とこの様に警笛を発する。平成24(2012)年12月02日 08:03に発生した中央自動車道・笹子(ささご)トンネルの天井板落下事故、ご記憶の方も多い事だろう。天井板が138mに渡って落下し、走行中3台が下敷きに成り、3人が負傷し、8人が尊い犠牲と成ってしまった。言わば、このトンネル内の天井板落下事故が今現在、各地に頻発に起こっているインフラ関係の老朽化の始まりの警笛の序章で有ったと言えよう。高度経済成長期にその多くが整備されてきた、日本の社会インフラ。オリンピックや万博による特需に沸き、東海道新幹線や東名高速道路などの開通もこの時期になされた。まさに日本が飛ぶ鳥を落とす勢いだった頃から半世紀以上の時間が流れた今、インフラ自体が最大の岐路に立たされている。道路、橋、水道など生活に関わる重要な社会インフラの老朽化が進む、しかしその一方で建設後50年以上経過するインフラが、大都市圏、地方圏と既に相当な割合を占めて来ている事が判明されている。老朽化だけではない。大規模災害への備えも喫緊の課題だ。3年前の令和04(2022)年は03月に宮城県や福島県で震度6強を記録。同年07月には同じく宮城県や、埼玉県で局地的大雨となり「緊急安全確保」が発表された。地震や豪雨が齎す社会インフラへの影響は切迫したものと成っている。8年後の令和15(2033)年には、更に深刻化。道路、河川管理施設、港湾障壁の3つで、50年以上経過の割合が過半数を超える。インフラは、人口がどんどん増えていった時に、一気に整備したものが多く。今はその逆のコースで、残念ながら人口が年々減少し、インフラをこれから全部更新、整備するのは予算の関係等でそうは行かなくなる。10人が10人『全員が賛成』と言う事は、今後無くなって行く事だろう。地元との話し合いや了解が無けれ中々先へは進まなくなる。「現代は先人の業績の後始末をする時代である。各種インフラの老朽化対策がその象徴だ。創るのは容易いが、維持管理、廃棄するのが難しい」そんな時代に成って仕舞ったと言わざるを得ない厳しいご時世と成った。戦後昭和の高度経済成長期に必要不可欠と言われたインフラが、半世紀を経た令和の今現在。今度はそれの老朽化と言う後始末に見舞われているとは何とも皮肉な事である。(・_・;)
(今年、01月に埼玉県八潮市で起こった道路陥没事故、余りにもその衝撃度は大きかった。)
(八潮市で起こった道路陥没事故を切っ掛けに、今年前半には全国各地で、道路陥没事故の事例が次々と発生した。)
(岩手県矢巾町では、全住民参加型による『水道サポーター』制度を導入し、公共の財産である水道を守るために、住民と事業者、行政が連携して一緒に学び、考え、水道の在り方を如何にしてあるべきかを決定している。)
(岩手県矢巾町に於ける「水道サポーター」制度の中で、住民とのディスカッションで生まれた定期活動の在り方。行政に任せるだけでなく、住民を交えて一緒に水道事業=ライフラインの在り方を取り纏めた内容の文書の一部。)
(住民自らが参加する事に因って、公共の財産である水道事業に関心を以って貰い、町民が自ら水道料金の値上げ等を含めた選択決定を担うひとつの例の方式を採用している。)
(平成24(2012)年12月02日、中央自動車道・笹子トンネル内で発生した、天井板の崩落事故。3人が負傷し、8人が尊い犠牲と成ってしまった。言わば、このトンネル内の天井板落下事故が今現在、各地に頻発に起こっているインフラ関係の老朽化の始まりの警笛の序章で有ったと言えよう。)
(令和12(2030)年には、インフラの老朽化率は増々高くなる一方、維持補修も全体の7割を占める事に成り、今後は維持管理費の捻出等、更に難しい局面に迫られる事に成る。)
(国内各地に点在している、公共インフラの実態。既に発錆び等が発生、直ぐ様に維持補修したい処ではあるが、それら伴う財政出動も難しくなる一方で、何十年も前から手付かずの公共インフラも多い。これからの時代は、少子高齢化の影響で、先人の業績の後始末をする時代に突入で、維持管理、廃棄するのが難しい、そんな時代に成って仕舞ったと言わざるを得ない厳しいご時世と成って仕舞った様だ。)
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JG7MER / Ackee
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